ほぐす
本日もfmGIG「お昼にほっこりどーどすか」を
お聞き頂きありがとうございました。
朗読コーナーで読ませていただいた詩は
「ほぐす 吉野弘」でした。
ラジオ番組内でもお話しましたが
これはNHKで放送されてた「この声をきみに」で読まれてた詩なんです。
でも、全文を読まれてなかったのが気になって
調べてしまった・・・というお話。
あのドラマにぴったりの内容だったと思います。
備忘録に、その「ほぐす」全文を掲載しておきます。
「ほぐす」 吉野弘
小包みの紐の結び目をほぐしながら
おもってみる
― 結ぶときより、ほぐすとき
すこしの辛抱が要るようだと
人と人との愛欲の
日々に連ねる熱い結び目も
冷めてからあと、ほぐさねばならないとき
多くのつらい時を費やすように
紐であれ、愛欲であれ、結ぶときは
「結ぶ」とも気づかぬのではないか
ほぐすときになって、はじめて
結んだことに気付くのではないか
だから、別れる二人は、それぞれに
記憶の中の、入りくんだ縺れに手を当て
結び目のどれもが思いのほか固いのを
涙もなしに、なつかしむのではないか
互いのきづなを
あとで断つことになろうなどとは
万に一つも考えていなかった日の幸福の結び目
― その確かな証拠を見つけでもしたように
小包みの紐の結び目って
どうしてこうも固いんだろう、などと
呟きながらほぐした日もあったのを
寒々と、思い出したりして
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